第1講 8月5日(金)

担当:藤村(運動制御)

運動は脳の自動制御により成り立つ

 

ラジオ体操第一!腕と脚の運動ー!と大きな声で叫びながら、腕を大きく回し膝を屈伸する運動を1度は行ったことがあるのではないでしょうか?この運動中、私たちは動いている腕と脚を上手くコントロールしているだけではありません。実はそれ以外にも、他の箇所、つまりは全身をコントロールしているのです。では、なぜこのことを私たちは知らないのでしょうか?それは、私たちの脳が自動的にコントロールしてくれているからです。このように運動をする際、私たちはその全てを意識的に行なっているわけではなく、多くのことを脳の自動機能に頼っているのです。確かに、無意識になんとなくできる動きってありますもんね。それでは、脳はどんなことをどのように担っているのでしょうか?果たして、"ちゃんと"動いてくれているのでしょうか?そんな、自分の身体なのによくわからない不思議な存在である脳を運動の側面から見る学問です。ぜひ、この不思議を共有できたらと思います。

 

第2講 8月8日(月)

担当:肖(英文学)

「信頼できない語り手」とカズオ・イシグロ

 

本授業では、現代英文学の代表的な作家の一人であるカズオ・イシグロ(1954-)について取り上げます。 「信頼できない語り手」という手法は、代表作『日の名残り』と共にイシグロの代名詞となっています。語り手スティーブンスが自分の執事としての人生を誇らしげに振り返りますが、やがてその語りにおける破綻が露呈してしまい、彼が直面したくない過去の喪失が浮かび上がって来ます。しかし、語りにおける矛盾はイシグロの「信頼できない語り手」の表出手段の一つに過ぎない。20世紀90年代に入ってから、イシグロの作風はリアリズムから離れ、「信頼できない語り手」もイシグロ研究のキーワードではなくなりましたが、その影響はイシグロの最新作まで影を落としています。初回の授業では『日の名残り』を中心に、他作品を射程に入れつつ、「信頼できない語り手」の手法の側面からイシグロ文学の発展を辿ります。

 

第3講 8月9日(火)

担当:藤村(運動制御)

立って動くことは大変なこと

 

初回の講義で、脳が私たちの意識の外で多くの制御を行っていることが共有できたと思います。本講義では、運動の中でも最も基礎となる立位姿勢での運動をテーマに話していきます。立位姿勢での運動って、なに?当たり前すぎて感じないと思いますが、私たちは地球上で生活する限り重力に対して抗うように運動しています。このような重力の存在は、私たちに常に転倒の危険性を与えていると考えることができます。この危険性の中で、私たちの脳はどのように全身をコントロールし、いとも簡単にバランスを保っているのでしょうか?さらに、バランスを取りながらドアノブに手を伸ばすなど他の運動を同時に行うことや、スポーツでより難しい運動をする際、脳はどのような自動制御を行うのでしょうか?バランスを保ちながら他の運動を行うことの危険性から、脳が行っているその回避方法まで立位姿勢での運動に焦点をあてて講義を行っていきます。

第4講 8月10日(水)

担当:肖(英文学)

イシグロ文学のテーマの系譜

 

本授業では、現代英文学の代表的な作家の一人であるカズオ・イシグロ(1954-)について取り上げます。 イシグロは最初の二作品で日本、三作目『日の名残り』でイギリスを舞台に設定しましたが、その後SFやファンタジーなどのジャンルとの融合を試み、多様な背景・設定を持つ作品を生み出しました。創作活動におけるイノベーションで注目を集めていますが、イシグロ文学の根底にあるテーマには意外と変わらない一面があります。間違った選択をしてしまい、失敗した人生に直面する時の人間の心理状況。実在しないが、心の奥底にある過去へのノスタルジー。そして狭間にあるアイデンティティから脱却し、完全なる何かになりたいという「変身願望」。二回目の授業では、初期作品から最新作までのテキストを読むことで以上のテーマを明確にし、テーマの側面からイシグロ文学の読みを再考します。

 

 

第5講 8月11日(木)

担当:肖(英文学)・藤村(運動制御)

ディスカッション

 

二人の講義を踏まえた上で、一つのテーマに対してそれぞれの「見方」を比べ合うディスカッションを行います。