社会保障政策と価値

概要

 1回目の講義では、公共政策を考えるうえで、なぜ価値の側面に注目する必要があるかについて考えました。2回目の講義では、焦点をもう少し絞って、特定の政策領域における価値の対立を考えてみたいと思います。取り上げるのは、社会保障政策です。
 社会保障政策は、公共政策の中でも、価値の対立が議論の焦点になりやすい政策領域です。政治理論においてもこれまで盛んに論じられてきました。
 その社会保障政策における重要な論点として、社会保障政策はどの程度労働と結びついたものであるべきか、という問いがあります。つまり、福祉を受けることと働くことは、なるべくセットにして考えようという主張と、福祉と労働は切り離すべきだと考える主張の対立があるのです。
この対立を価値の観点から考えてみると、驚くほど多様な論点が浮かび上がります。2回目の講義ではベーシック・インカムという政策アイデアを切り口に、社会保障政策における価値の対立の諸相にアプローチします。

講義を終えて

前回の講義では公共政策一般と価値についてお話しましたが、今回はより焦点を絞り、社会保障政策と価値について講義しました。はじめに、日本の社会保障政策の特徴を、実例を挙げながら説明し、近年の社会保障政策論議の状況を紹介しました。後半では、近年ラディカルな社会保障政策のアイディアとして注目を集めているベーシック・インカムについて解説し、なぜこれが議論の対象になっているのか、またベーシック・インカムの議論はなにが論点になっているのかについて説明しました。
社会保障政策は、わたしたちの暮らしを支える身近な政策領域であるにもかからわず、その内容について体系的に説明される機会はほとんどありません。本講義でも説明した通り、社会保障政策は今後も制度改正の議論が盛んに行われていくものとおもわれます。今回の講義の内容を踏まえて、自分なりの視点でその議論にキャッチアップしていただければ幸いです。