担当:総人上回生
卒業論文は、学部生が最初に取り組む「アカデミックな文章」だと思います。
もちろん、それまでもレポートなどは書いた経験があっても、一定の分量を書き、先行研究を調べ、自身の提示した問いに答えていくという論文の体裁の文章を作っていく機会としては、恐らく最初のものでしょう。もしかしたら、最後の機会かもしれません。
1-2回生の方は、「卒論なんてイメージできない!」と思われるかもしれません。あるいは、「そんなことできる気がしない」と感じるかもしれません。
今回は、卒論に目下取り組んでいるみなさんの先輩たちに、自身の卒業研究について発表してもらいます。
先例を知っておくこと、先輩の経験を聞くことは、卒論のイメージを明確にしてくれるだけでなく、今後の学部生活をどのように組織していくかを考える上での手がかりを与えてくれるはずです。
お楽しみに!
ちなみに、聞いた覚えのない人もいるかもしれませんが、総合人間学部には、「研究を他者に語る」という制度があります。
これは、総合人間学部と人間・環境学研究科が掲げる「研究を語る」という教育課題を現実化すべく作られた制度です。(そんな教育課題があるなんて知らなかったという人も多いかもしれませんが。)
今回が、みなさんにとって「他者の研究を聞く」力を養う機会の一つになればと思っています。
今回は、総合人間学部の3,4回生が自身の卒論について、進捗や今後の方針について語ってもらった。「総人上回生による卒論紹介」という企画は、初めての試みだった。
初年次の学部生にとって、「この頃にここまでやっている人がいる」「この時期にこんな試行錯誤をしていた」といった上回生の事情を知ることは、総人をタテにつなぐという意味で有意義だったと思われる。
院生は、数年後のロールモデルしか提示できないが、ほんの数歩先の未来である上回生は、より具体的な指針となるだろうからだ。
実際、登壇してくれた学部生たちは、その役割を果たしていたように思う。
学部上回生として発表するという機会に、軽いフットワークで参加してくれたことに感謝したい。
両名の発表は、学部生として非常にクオリティが高かいものだった(ひどい卒論を書いた身としては、恥じ入るばかりだった)。
とはいえ、研究の与える印象という点で、両者は対照的でもあった。内容に触れない限りで紹介するなら、それぞれ以下のような研究である。
「しかし実際には」と書くことができたのは、直接には語られなかった視点が、質疑応答の中で明示化されていったからだ。
コンテンツを共有した上で、素朴な疑問に晒されるという構成は、分野を超えたコミュニケーションを可能にする一つのあり方だと改めて思わされた。
研究を他者に語るとき、ほかならぬ研究のために身に着けたはずの「装備」を外すことを強いられる。専門用語でショートカットできている思考、分野で共有されている前提知識、その分野の持つ関心の方向性などのことだ。
今回、それ以上に実感することになったのは、異分野の研究について手短に知りたいとき、私たちは、その分野での研究の位置づけや意義を知ろうとする傾向にあるということだ。
研究の方法論や内容についても、当然疑問が浮かぶだろう。しかし、そうした質問が的確なものとなるためには、「その研究が当の分野でどういう役割を果たしうるのか」を知り、研究について具体的なイメージを持つ必要があると思われる。
なお、院生メンバーである萩原さんの発案で、質疑応答をメモするという役割を急遽設けた。院生側は、発表者の研究が前進できるような何かを持ち帰る仕組みを事前に十分検討しておくべきだと思った。今後の課題として、ここに記しておく。
谷川(哲学・観光学)