アメリカ外交と文化:第二次大戦期~冷戦初期を題材に考える

担当:奥田俊介

概要

前回の講義では、外交史が扱う事例や内容、外交史研究の方法論を、資料調査の経験談と共にお話ししました。今回はもう少し具体的に「米文化と冷戦」というテーマについてお話ししたいと思います。

 

 「冷戦」は、定義も起源も定まっていない、曖昧な概念です。ですが、直接戦争は行わないものの、朝鮮戦争やベトナム戦争、核開発などを通し、東西両陣営が激しく対立した時代であったということはできるでしょう。そして、この時代は同時に、東西の「文化」の優劣もまた争われた時代でした。

 

 戦間期に花開いた映画産業や、先進的な科学技術、教育制度など、様々な「米文化」は、第二次大戦期以降、急速に外交のために用いられるようになります。冷戦初期の時代までに、米政府がこれらの文化・技術等をどのように用い、如何なるアメリカ像を提示しようとしたかを概観することで、外交を「文化的視点から見る」一つの例を提示したいと考えています。

講義を終えて

 今回の講義では、①第二次世界大戦期~アイゼンハワー政権期の米外交史の概観を行った後、②各論として教育・科学技術を外交に利用しようとした事例を二つ紹介し、③「広報・文化外交」がどのようなものか、実際にどのように行われ、かつ冷戦史・米外交史においてどのような位置づけを与えられうるかということをお話ししました。

 前回と同様、必ずしも世界史を受講していない学生に対してどの程度専門用語を含め、かつどの程度まで深い事象に踏み込むかなど、考えることが多かった印象があります。また、年表を用意することや、スライドに大統領、または政策担当者などの顔写真など画像を張り付け、よりイメージがしやすくなるような形にする必要があったのかな、という点が課題でした。

 しかし、前回と比べ、学生への問いかけができた点や、前回はできなかった公文書館における調査の様子を写真と共に見せられたこと、ウケもちゃんととれたこと、そのあたりは良かったのかなと思っています。この講義をきっかけに、国際文明学系、特にアメリカ史・国際関係論への興味を持ってくれたら、それ以上に喜ばしいことはありません。ありがとうございました。

アシスタントコメント

 今回の講義は、戦後アメリカ外交史の概略と、各論として教育や科学技術とアメリカ外交との関わりについてのものであった。

 ところどころ世界史の前提知識を必要とするような、あるいはやや情報量の多い講義ではあったものの、要領を得たまとめ方とスムーズな話し方によって、受講する側は内容理解を促進されていたように思われる。

 

 講義終盤には、奥田さんご自身の現地での史料収集に関する体験談があった。哲学研究において、海外のライブラリーのようなところに赴いて、哲学者の実際の遺稿を閲覧するということもありえなくはないのだろうが、私自身がそういった研究方法をとっていないため、大変興味深くお話を聴かせていただいた。

 奥田さんが撮影された、現地での写真を交えながらのお話によって「海外での現地調査」が具体的にイメージしやすいものとなり、受講している学部生にとって大変有意義な講義となったのではないだろうか。

 

三升(哲学)