文理の双極:"似"て"非"? "非"て"似"?

担当:伊縫・山根

概要

文理選択――。大学までの学びの過程で,ほとんどの人が一度はこの選択に迫られたことでしょう。文系・理系のそれぞれのイメージは広く共有されており,それらは互いに大きく隔たったもののように扱われています。しかし,学問の地平において,文理の極はそんなに離れた位置にあるのでしょうか。

 

そんな疑問を胸に,今回のディスカッションでは,まさに文系・理系の代表格ともいえる「文学」と「数学」をさまざまな切り口から見比べてみたいと思います。日本近代文学の山根さん,解析学の伊縫さんのお二人にご登壇いただき,研究の方法論から鑑賞者・研究者としての態度に至るまで,相違点や共通点を浮き彫りにしていくことに挑戦します。果たして,文理の双極はどのような点で接点をもちうるのでしょうか。議論の行方が楽しみです。

 

文責・司会 萩原広道(発達科学・リハビリテーション学)

講義を終えて

山根

数学と文学。まさに文理の極である両分野を専門とする二人のディスカッション。この企画を聞いた時には、はたして成立しうるのか不安に思いましたが、実際に行ってみると、似ているところが複数あり、驚きました。私は根っからの文系で、数学をひたすら避けて生きて来たのですが、今回のディスカッションで、数学も面白いかもしれないと、はじめて思いました。私が苦手としていたのは、数学ではなく、数学教育であったのかもしれません。何を面白く思うかは個人差がありますが、それでも学問は万人にとって面白くあるべきなのかもしれませんね。そして、その面白さを伝えるのも、研究者の大切な務めの一つなのではないでしょうか。研究者として、自分の専門分野の面白さを人々に伝えられるようになりたいと、思いを新たにしました。

 

伊縫

ディスカッションに来てくださった皆様ありがとうございました. 文学を研究している人とディスカッションをするということが今まで無かったのでとても新鮮でした. 個人的に, 文学研究者の書く論文と数学研究者の書く論文の比較したとき, 文学研究者の書く論文は私が思っていた論文とかなり違っていて, それがとても印象に残っています(縦書きに書く, 基本的には単著, 論文が日本語, など). もう少し話したいなと思うようなことがいくつかありましたが, 時間の関係で話せなかったのが残念です. もしもう少し話し合うことが出来たら, 文学と数学の相違点や類似点が浮き彫りになっていたのではないかと思います. また機会があれば, 今回のようなディスカッションが出来たらと思います. 

 

萩原(司会)

文学と数学という一見するとまったく異なる学問分野にも,相似的な特徴があることが浮き彫りになったのではないでしょうか。実際の研究の営みや,雑誌掲載された論文を見聞きしながら登壇者にお話しいただいたので,一定のリアリティもあったように思います。ただし,話が平行線のまま進行しがちで,登壇者同士で交錯するような議論がほとんどなかった点は大きな反省点といえるでしょう。文学研究 VS. 数学研究,とまでは言わないまでも,もう少しバチバチとやりあうような場面があっても良かったのかもしれません。

それはともかくとして,2018年度前期の「総人のミカタ」は今回で終了です。懇親会で,ある受講生が「ここに来ると“総合人間しているなぁ!”って感じがする」と仰っていました。とても励みになります。現状に甘んじることなく,もっともっと総人ならではの「場」として機能するよう,スタッフ一同がんばっていきたいと思います。